眠気と改心したhappy

幸せは歩いても来ない 来るべき文学のかたち

俳句短歌集

【俳句】

 

意味なしの湖のほとりでおぼれる

 

鉄道です陸海空に走ります

 

わかりません窓枠壊したなにもかも

 

女たちセメントの下おんな工場

 

夏、布団ああ、あああこの温かみ

 

雪ゆきよ鮮血こぼるるるあの国旗

 

暮れましたなにもかもかも鴨飛んだ 

 

水辺にててにをはついでに石投げて

 

瑞々しいねっテッ鉱石けっこう僕みたい

 

痒いのか求めるなってば隙間風

 

こころないひとのて妙になまぬるい

 

そここここドストエフスキーここここそ

 

眠れん夜の山茶花よそよそしい

 

空色の心臓があってもいいじゃない

 

珍しくも泣いてる私は泣けない

 

?あささささしししししししるるるるよ!

 

ところで誰が顔を破壊するの

 

歴史・核デデンと繁ったインスト…ア

 

夜の手前の志はさざ波

 

損したね生まれちゃったよねミケランジェロ

 

しょっぱなの塩っぽさとは?しょなっぱか

 

我が闘争書き上げた愛ヒトラーじゃん

 

ぼったくりにアッってしまうのさぼった栗

 

ちょっとまってよ意思無き石に惚れて縊死

 

悲しいねなにが、なんだか逆さ富士

 

なんとなく道に迷ってみましたよ

 

 

 

【短歌】

 

愉快でおもしろいでしょ痛快でみんなが笑ってるトーキングヘッズ

 

あつさゆえかのチと眼房膨れてゆのミももちててルびぃの心

 

そばからそばがら離れて往くひとよわたしはベッドで不貞寝ですよアー

 

あくまでも生きるつもりだわっはっは笑み変えずに鏡にはメフィスト居たり

 

心の中のぞいてみましょう何も無いおれに文句を言うんじゃない

 

そうそう粗相めんつるつるしかられたなんのことだよ答えろ老い

 

むちゃくちゃやん泥駄裸懸どろだらけだねうるせえよ飾って消えてくプログレッシブロック

 

死んでまえ頼んだ面倒で週末僕はなぜか死んでない

 

束この毛無理何も出来ん食らった鼠の生き様無様だよ俺

 

消えます夜に私は気づいたよすべすべ手は饅頭はカニです

 

パズルのPで練り歩くPの柄一本足あたまでっかちバッハ/プロコフィエフ

 

大納言天地創造あずきたち、8月7日にドロドロになる

 

厭世遠征する先生が牽制して自殺したってさ

 

そしってそして苦しんだからいつの日か知らせる温かい死にざま

 

病室でフェルメールが鳴いたりするよ盲腸ですねそろそろ手術

 

小島の蕪尾さんが実は隣人です誰も住んでない最後の人類

 

電気代君が心配そのことが私は笑って理解されない

 

はしわたしハシブトガラスが燃えている焦げ落ちてるし大変ですよ

 

見つめあう盲人たちの愛はよすが転んじゃってるよ隅っこで泣いてら

 

Re世界つまらん規則と秩序だけ知り尽くして1+1=2

 

舞台にて東海道中膝栗毛古今東西悲しみだらけ

 

空を飛ぶ夢を見ました綺麗でした私はキリスト/精神科にて

 

理論的現象学哲学観情念論的わたしはここに

 

怒りさえ静まる海のあたたかさ肺から染み出るコキュートスの流れ

 

そっかそっかわかったよもうぜんぶぜんぶわかったよほんと生きてるんだって

日記to顔面onthe口

あの時計台を破壊しろ!
ハイエロファント・グリーンのように、
解放、解放、解放、解放、解放、解放
われわれはきつくきつく縛られている!
すべての者共に、警告――
解放、解放、解放、解放、解放、解放
――してやる!
口を閉じろ
耳を塞げ
目を閉じろ
鼻を捥げ
皮膚を剥げ
すべての災厄から今こそ人間を解放するんだ!
するんだ するんだ
するんだ!

しかし死んではいけない!
しんでしまうとはなさけない!
しんでしまうとはなさけない!

なさけない!

生きて、なにも生み出すな!
語るな、聴くな
生きるな!

今夜空にきらめくこの時計台に
糞を垂れ
鼻水を毛穴とマフラーから噴出!
空!みえないだろうな!明日という雁字搦めになった時間の
フィネガンズ・ウェイク
虐殺!警察署で職質顔パス
国会議事堂で――
解放、解放、解放、解放、解放、解放
――ダンス
箪笥のダンス!

あるいはポルカ

ただそこに花があればいい

限りなく薄いガラスでかたちづくられた

その花が咲いていればいい

花が空間を示すといい

花がかたどる雨に

魅惑を寄せればいい

われわれの

死の淵を埋める

空間を示す

限りなく薄い空間に

水や空や森が満ちて

 


それを願い続ければいい

ありえないほどの熱を持って

われわれは熱を越えることが

できるだろう?

燃やされたんだ

物語が消えたんだ!

消えたんだ‼︎

 


もはやなにも無くなってしまうのかもしれない

雨が洗い流すのかもしれない

われわれは物語の中で

物語を背負っている

のではなかったか?

 


手に刻まれた筋の一つ一つに

物語が生まれているのでは

なかったか?

生きた徴があるのではなかったか?

脈打つすべてに、祈ることはできないのか?

 


われわれの字を加速させろ

われわれの腕を加速させろ

先細る火花を伸ばせ

止まるまで

自らが

その熱が冷めるまで、冷めてもなお

 


記せ、その熱を浴びる

花を

簡潔な均整さを

空間を

それだけではない

加速させろ

熱を持って焼却しろ

徴をもとめてわれわれは

 


ただ祈れ、自らを求める

長編断片集

【二十歳の千歳の言葉と、私の対話】

文藝文春 1999年4月1日初版「三章 千歳の涙」より

 

 たとえば私が自殺したとする。

 あなたは泣いてくれるでしょうか? 私が死ぬのならば、首をくくって死ぬことでしょう。あなたは第一発見者になることでしょう?

 世話、してくれるでしょうか?

 毎日水やりをしてくれるでしょうか? たまに栄養ドリンクと精神安定剤をあげないと、意志として縊死の私は、しっぽちんぽ巻いてなめて逃げてしまいます。

 以下は、縊死私のトリセツです。

 


グロリシャール——それは、近代的な晴乳びんが発明された時代でもありますね。

M.フーコー!——なんですって、私はその年代を知りません!

A・グロリシャール——一七八六年にバルディーニというイタリア人による『「授乳する方法』の翻訳が出ました。

M.フーコー!——公私すべての役職を辞任します!裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所パノプティコンにぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!

 


色違いボルケニオンゲット!

 

 

 

【図解雑学 バビロニアメソポタミア文明

ナツメ社 2005年36月√3日 8節2章 「サルトル」より

 

 メソメソ泣いてるメソポタミア文明を慰める神聖ローマ帝国いとうせいこうは、あるリリックで彼を慰めていた。

「つまらないくだらない意味がないないないがない

いないいないばあの婆そのバーバーカ!」

 うっせえぞ!

 

 

 

魔法少女まどか☆マギカ

東京電力 2011年3月11日 2章「福島人」より

 

 ある男が二人、ペアでベンチに座っている。陽が傾いて遊具の類の影は存分に伸びていた。男達が座るベンチには影は伸びていない。男達自身の影が伸び、そして男達はそれを見守っている。

 ひとりの眼鏡をかけた男が、口を緩めてため息を吐いた。もうひとりのプーマの帽子を被った全裸の男は、朱印船貿易について考えていた。時代背景的考察をするのは彼の得意技だった。朱印船貿易手淫の関係およびオー・ヘンリーの毛穴風リゾット定食的短編集について。

 ひとりの男は喋り出す。

——それはある時の物語だったんだ。

 公園に響かぬ声としての彼の声は、生まれるがままに生まれ、死ぬがままに死んでいった。男はそのシャッターチャンスを見極めて、語り出す。

「そうだな」

 烏が頭上を飛んでいる。大群の烏のうち、重力加速度に興味を持った烏が、公園に降り注ぐ。公園は烏の墓場となる。

——あるいは物語ではないのかもしれない。

なにいってんだこいつ

——ありうる。

——だから私はこうしてものがたり、物語ではないものを物語せしめるのだ。

——いいぞやったれ。

——聞いていてくれるかね?

——無論

 無論。その響きは公園いったいに響いた。大気をさまよいながら、その振幅を伝えて遊具、土、時計台全てが響く。ところで今は12時38分である。この同時刻において、フランスでは若い男女がエッフェル塔によじ登り、パフォーマンスをしていた。やがてパフォーマンスは観客を支配した。観客が進んでパフォーマーとなり、エッフェル塔へと登攀。私の位置から見ると、エッフェル塔が真っ黒に見え、蟻が群がっているようだ。やがて飛行機なエッフェル塔の書割を走り抜ける。その中に乗車している、ソポポンペ=メリッサ・ポロポンペは、エイモス・チュツオーラの小説を読んでいた。彼らはおもむろに、なんの前触れもなく——狂人のように——強靭な狂人のように——強靭な狂人の教授のように——坂本龍一——語り出した。

——無論おっぱい。

——無限おっぱい。

——すなわち……

 

 

 

円環子作りするか・・・地球(ジ・アース)

 

 


——ソペロピッチョ!ソペロピッチョ!ペペポリゥスペッチョ!ペペポリゥスペッチョ!

オー・ヘンリー傑作集」

「又の名は?」

大乗仏教

「体調は?」

「大丈夫」

「嘘をつくな! 精神科に行け!」

 殺すぞ、孕め!

 

 

 

永井均の〈罠〉】

中公新書 令和2年2月 三章 「〈私〉のつまらなさ」より

 

 あるいは人を殴ってみる。痛みが返ってくるとする。人もいたいし、私も痛い。

 では、痛みとは? ここには一人称の痛みが二つある。つまり、間痛覚を痛覚する。

 マゾヒスト=サディストの円環はこうして閉じられる。

 

 

 

【も】

も も も 「も」も

 

ホリエモンが福島第一ゲルパッドでメルトアップ!?」

「そうなんだ……まいったな。オレ達東電職員は混乱に混乱してみんなもう、気がいかれちまったんだ」

「ああ……だから建国したのか」

「そういうことだよ。非国民だ非国民だと紛糾に合った結果だよ」

ブラームスのブラジャー。

ブラームスのブラジャー。

ブラームスのブラジャー。

ブラームスのブラジャー。

ブラームスのブラジャー。

ブラームスのブラジャー。

公私のすべての役職を辞任します!なんと恥ずかしいことだ!悔悟の灰を頭からかぶりたい!傭乳瓶の誕生を知らなかったなんて!

 


そういう類のええじゃないか運動

 

 

 

【ソポポンペ、ガスボンベ】

 

 

 

 

【ヤリマンキチガイパノプティコン・イコノグラフィー的フェルメール肖像画におけるヤリマンキチガイのヤリマンキチガイ性における現象学的還元——縊死川五右衛門】

 

 

 

西野カナのトリセツ】

岩波文庫 2015年3時11分改訂版2章「!」より

 

 西野カナが復帰した。大江戸ギャルズに。そこで哲学者の彼女は「比類なき〈私〉のトリセツ——槇原敬之のホモismあるいはおしゃれイズム」を執筆していた。ある晴れた日の午後だった。村上春樹

「カナちゃん?」

「公私のすべての役職を辞任します!なんと恥ずかしいことだ!」

「そうだね……カナちゃんは顔もいいし、スタイルもいいし喋りもうまい。だからさ、こんなところで働いていないで、も出るとかで活動したほうが、あ出る」

——悔悟の灰を頭からかぶりたい!

「ふう……気持ちいいね。カナちゃんも気持ちいい?」

「色違いボルケニオンゲット!」

「そう、ありがとう。ボクのことを認めてくれるのは、カナちゃんしかいないんだよ」

「色違いボルケニオンゲット!」

「はあ……可愛なあ」

「色違いボルケニオンゲット!」

「ところでさ、カナちゃんって哲学者なんでしょう?」

「そうだけど」

「色違いボルケニオンゲット!」

「色違いボルケニオンゲット!」

「ボクのことを哲学してみてよ。ボクという存在はいったいなにを意味しているのだろう? ここのヘルスにはフッサール全集と、ドゥルーズの著作集があるよね?」

「色違いボルケニオンゲット!」

「ボク、カナちゃんのこともっと尻たいから、どっちも読んだんだってつぎはアナルいくぞほれほれ挿入じゃい」

「イw」

「ごめん」

 


色違いボルケニオンゲットの電子音...

 


公私のすべての役職を辞任します!!!!

公私のすべての役職を辞任します!!!

公私のすべての役職を辞任します!!

公私のすべての役職を辞任します!イク

公私の

 

 

 

公私のすべての役職を辞任します……

 

 

 

——

 

 

 

木に咲く花のように

 


悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

切れ痔

いたい

いたい、いたい、いたい。

したい、したい、したい。

したい

いたい

いたい、いたい、いたい。

したい、したい、したい。

したい

ここまで、男女の会話。

ここから、悶絶アナル地獄で服役中。

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

悶絶アナル地獄で服役中

平行、ただ出来事と灯り。

 見事に炸裂した世界の焔、もう燃えかすとなって佐野の額に張り付きながら、そのからだをひくひく、、、、とよじらせ、佐野の体へと熱を伝播した。
「あっちい!」
 佐野は仰け反り額を何度も擦り、不幸な自分と哀れなその姿をヨウコに見られていたことを後に知る。彼はその時なにを思ったか? 佐野の胸中にあったのは、ただただ忘我の念。彼女の目の前でこんな痴態を晒してしまったことに対しての後悔と、より一層深まったヨウコへの恐怖。ヨウコは慌てふためきながらも平然を装おうとするとする佐野の、本当に心配すべきであった焔がそちらにも散っていたという、一万五千円のシャツを横目にこう言った。
「佐野さん? どうしたのかしら。」
 ヨウコの冷徹な眼差し。佐野はヨウコを焚き火をしていた。本を燃やしていたのだった。佐野とヨウコが持ち寄った、不要であると思われる本を燃やす儀式を行っていた。その周りは木々が慄然と立ち、黝ずんだ空に向かって伸びていた。きっと今も伸びているだろうし、それらは少しの大気の揺れを感知し、そこに繁らせた葉を鳴らす。ついでに花粉も飛ばす。そうした生殖行為としての木々は彼らを天から見下ろし、ただただそこにいる。焚き火を行う場所はぼうっ、、、と灯りが灯っていて、さながら深夜の宮殿内で灯る燭台のように神々しく育っている。そうして彷徨う王妃は慣れないながらもレッド・カーペットに交互に足を踏み出し進んでいく。レスト・ルームへとその足は向かう。宮殿に展示された数々の甲冑やら絵画は、彼女の心に今しばしあり得ないほどの感情を宿した。彼女は下半身を震えさせ、白の壁紙に挟まれた通路を歩む、じっくり、、、、と歩む中でひとつ思いたることがある。
「夜は暗いけれど、この宮殿の中よりは暗くないわ。」
 そうなのだ。彼女は心に現れてしまったこの恐れを、何かへと写した。ひとつは彼に向けて。ぐっすり、、、、と眠ってしまった、彼の一続きのシーツに残した汗や体臭、そしてそこに私はもういないし、それでも彼は眠りをやめない。彼の眠りは深い、性交のあと、まるでそれが一日のノルマであったかのように眠りにつき、尿意や便意を催すことなくぱたり、、、と呼吸を続け、ほとんど動かなくなる。呼吸を続ける目を閉じて彼は、そうして一日が終わる、のだから彼にはこの闇は理解されないだろう。ふたつは明日へ向けて。明日は某資産家との会合が控えていて、彼女はなにか特別な事をしなければならないというわけではないが、その皮相な会話を彼の側近であるから、ただ女としてそこで感じることになるだろう。彼女はそれを呪いたい気持ちになる、それは会合において毎度それが心に現れるのだ。表現し難いその感情は、いま私が宮殿内をひとつの燭台の灯りを頼りに彷徨っている間に生まれたものと、どこか似ているような気がする。最後に彼女はここに見えるもの——燭台の仄かな灯りで光る、ぴかぴか、、、、の甲冑の看過し難いサビ……絵の具の集まりにすぎない現実から切り取られ、画家によって極度に歪む運命にあった現実の形骸……紅茶のシミさえも許されない朱色のカーペット……そして闇——全てに写した。彼女は闇に囲まれ、その中で燭台を手にしながら尿意を我慢する人間となり、一歩一歩進んではいるが実のところ立ち竦んでいる。
 気づく、彼女はこれらの写しを繰り返していたことに気づき、また同程度かそれ以上のものに気づいたのだが、彼女にはそれが理解し難いものだった。いや、彼女はそれを知るすべがなかったのだ。そのユリイカわかった!において彼女は行動。見るものの中を揺蕩うように歩みを進める。彼は私の残り香に包まれ幸福の最中で熟睡。私は歩く、歩くために歩いている。
 宮殿内のレスト・ルームまで来たが彼女はそこに立ち寄らない。そしてレスト・ルームを左に曲がると、右手には螺旋階段がある。螺旋階段からも、階下からも展望できる大きな大きな絵画を、螺旋階段の手すりに立って眺めることになる。巨大な絵。ただの風景画、それ以前にただの絵の具の集まりであるそれは、北欧の田園風景を描写したものであり、なだらかな丘陵に立ち潜む断崖と、羊と戯れる羊飼いの少年を前景に、対比されて描かれている。だがこの絵画には奇妙なところがあり、画家が北欧旅行を終えたあと家には帰らず、そのまま中国の南西部、貴州省の中部に位置する安順市へと足を運ぶ。画家から聞いたことでしかないため、私はその場所を知らないが、画家が見た景色というのはそこに現れていた。北欧の田園風景が描かれているというのに、中国風の掘っ建て小屋が見え、絵の具で描かれているというのに、水墨画のような雰囲気がそこに現れている。彼女はそこでユリイカわかった!。また何かを閃くことになるが、彼女にはそれがわからない、、、、、。わかっていないことすら彼女にはわからない、、、、、。だがしかしそれは彼女には関係がない。彼女の背後には玄関が閉ざされているが、そのはるか上には幾数ものステンドグラスが張られている。ステンドグラスは宮殿を取り囲む森の夜を、その色ガラスを通して宮殿内へと通す。螺旋階段が階下に触れているその平面上に絵の具が散らばっている。螺旋階段の手すりを絵の具はよじ登っていき、彼女の背後へと回る。彼女はステンドグラスの後光を受ける。彼女は見る、その大きな田園風景の絵画を。
 彼女はそのような台本の中で螺旋階段の手すりに立って放尿する。
 ネグリジェが尿で汚される。レッド・カーペットに尿が滴る。汚されたネグリジェがその重さによって私の脚にへばりつく。私はそこで小さな頃に服を着たまま水に入ったことを思い出す。突然入ってしまった水の中で、私はもがき苦しんだ。水から出ようをじたばた、、、、し、皮肉なことにそのじたばた、、、、故に水の深くへと降りていった。藻が揺れて砂や塵のようなものが見えなくなってくると、私は体を動かすことをやめた。自然にそれをやめていた。水の深くへと降りていくのを感じ、陽光が届かないところまで沈んでいった。私はそこで自由だった。全てのものから自由であり、極限に達していた。そのなかで私は体育座りをして何度か前転と後転を繰り返して、まるで子供のように遊んでいた。気づけば母親がたいそう心配げな顔をしているのが目に飛び込んできた。それは私をがっかり、、、、とさせた。私はこの体験を引きずって生きてきたのだ。
 そして今それを感じて放尿をする。長い放尿は性交後の尿意もあったが、どこまでも続いてしまうこのカーペットの上をひたひた、、、、歩いていたことで、女としてのこの短い尿道からはみ出させず抑えに抑えた結果だった。彼女の顔には恍惚の表情、怯懦の表情が同時に浮かんでいた。もはや彼女の顔には表情がなく、のっぺらぼう、、、、、、だった。永い永い放尿を終えると彼女は尿で濡れた螺旋階段の手すりで足を滑らせ、真っ逆さまに落ちていった。彼女はその流れを待ち望んでいたのだった。画策されたそれだったということで、彼女はその間を大いに愉しんだ。流れていく時間の中で次第に絵画がフェード・アウトしていく——螺旋階段の支柱が見える——それすらも消えていく——目を瞑る——深い水の中へ沈んでいく——水の中へ——この中へ——奥へ——奥へ——尿——ドサリ、、、 と佐野とヨウコが焚書していた焔へと彼女は消えていった。便意を催していた彼女は焔へ葬られて安心していたところだった。その焔は燃えかすとなって大気を彷徨った。佐野は意識せずそれを吸い込み、また吐き出した。
「ヨウコさん。」
「あら、なんでしょう?」
 くだらないことだが、ここで「あら、なんですか?」と返答してきたらどこか、婚約を結んだ間柄のようだな、と佐野は考えたがあまりにもくだらないので棄てた。それは燃えかすとなった。
「ヨウコさんが焼いた本を僕はまだ知らないのです。ヨウコさんは、普段どのような本を読んで、どのような本に吐き気を催すのでしょう?」
 ヨウコは神妙な顔つきになった。ヨウコと佐野の上空に大鴉が低い鳴き声をあげて飛んでいった。その次にざわざわ、、、、と木々が鳴り、鳥の大群が闇夜を翔けていった。ヨウコは佐野の全く個人的な質問に応える前に、左手の人差し指の付け根を上唇の裏に当てる。その様子を見ていた佐野は、なんとなく色気を感じてどきりとした。ヨウコはそんな佐野を誘い焦らすかのように悩ましげに脚を動かして、砂を鳴らした。焔はヨウコの脚の先でぱちぱち、、、、と燃えていた。焔の灯りで橙色に見えるヨウコの脚の前にすこしの燃えかすが飛んでいた。
「私が読むの、普段、小説よ。哲学の本も読むわ。数学の本も読むし、物理学の本も読む。でも、化学や生物学の本は読まないわね。」
「なんというか、思った通り、という感じです。」
「そう? 私、そんなに陰鬱な雰囲気?」
「いや、そうではなく。」
 佐野はたじろぐ。ヨウコは続ける。
「私が吐き気を催す本は……なんでしょうね?」
「教えてください。」
「読んだことがない本かしら?」
 空に烏が飛ぶ。木々が鳴る。そして、さっきの鳥の大群も再び闇夜を翔る。「ん?」と咄嗟に出た言葉が消えてこの闇にのまれていくと、空を飛んでいた烏や繁らせた葉を鳴らす木々、鳥の大群がまるで灯りに吸い込まれていくように、佐野とヨウコの焚き火の中へと入り込んでいく。ぐいぐい、、、、と入り込んでいき焔は大きくなる。それって……と口を開く佐野が包まれてゆくまでに見たのは、ヨウコの半開きの口が示す微笑と、ゆったりとした白のネグリジェに身を包んで燭台の灯りを尿で消そうとする王妃の幻影、艶やかなヨウコの髪が地面まで伸びていくそれだった。
 
——
 
 これで物語が生まれる準備は整ったというわけだ。