眠気と改心したhappy

幸せは歩いても来ない 来るべき文学のかたち

無視

私はこの状況に果てのない怒りを感じると共に、なにかしらSFめいた面白さを感じている。やはり、自分が犠牲者にならないまでには、その本当の恐怖を知ることは出来ないのだ。人間というものの浅はかさ、愚かしさを星野源を通して、内側から骨身に感じることがよくある。
 ホント泣いた。悲しくて……。ごめん……。
 祐子さん! とさらに獰猛な星野源が叫ぶとレジの上に祐子が現れた。
私はただ星野源について、悩んでいただけなのだ。
私は星野源の鳴き声がよく聞こえる位置にいるかと言えば、そうではない。太平洋側に住んでいるためである。だが、太平洋側に住んでいるからといって、油断はできない。窓は常に二重でぎっちりと閉めておかないと、星野源が闖入してきて仕方がないからだ。特に春や秋といった気温がとても心地よい頃に、星野源がやってくるとひとたまりもない、網戸の間をところてんが滑り込んでくるように星野源がやってくるのだ。こうして考えてみると、日本海側に住んでいる人たちの、窓は一体何枚なのだろうか。考えて見ただけでもおぞましい。五重くらいしておかないと対策の意味がないのではないだろうか。なんていっても、あの星野源が侵入してくるはじめの場所なのだからだ。
星野源にまつわる話】
 その怒りは一点に集中していく。そう、ペニスだ。射精!
 夫以外のペニスを求めにスーパーへと駆け込んでくる人妻のために、野菜売り場の前に体を据え、目にも留まらぬ速さでジーンズのチャックを開いた。天狗の鼻の如くそそり立った陰茎……。開放感……。

 なんとなくパイパンになった祐子を見ていると、怒りがこみ上げてきた。
私だって人間だ。生きていると嫌なことだってある。そうした時、日本海側から《YuuuuuuMeeeeeeeeeNnnnnn・OoooooooNaKaaaaaaaaaaaNi・ÆNMaNa》と唸りながらやってくる朝鮮産の星野源の姿を思い出すと、かなりいい気分になる。あのクソッタレの野郎め……なにがマイセンだボケ……マイセンなんてもう置いてねえんだよ……メビウスって言うんだぜ、白髪が目立つ中間管理職よ……。そうして僕は頭の中で星野源に中間管理職を抹殺させるのだ。
YuuuuuuMeeeeeeeeeNnnnnnという音が鳴り響くのだ。それも日本全体に。そして、言うまでもないが、近づいてくると、
〈2019年2月6日 この小説は中原昌也という小説家に影響を受けて書きました。〉
それでもなお、どうして、どうして警報なんてものが必要ないのかというと、彼自身が大きな音を発しているからだ。そう、ちょうど自動車がその曲線美をなだらかな道に転がしてやる時に、どうしても音を出さずにはいられないように。
 汚ならしい陰毛で、パスタを作ろう。さらに獰猛な星野源は祐子のフルーティな香りの陰茎を、りんご農家顔負けの丁寧さで刈り取り、パスタを作った。

 
 射精のひと時——それは甘美な痙攣——に精液を放ち、大声で「つづく日々の道の先を 塞ぐ影にアイデアを」と叫び、同時にピアノ線のような緊張が一気にはじけるため、体毛が抜け落ちる。だが抜け落ちかたも尋常ではない。陰茎を中心にして堅牢な陰毛が放射状に発射されるのだ。
「無理だね」彼はそういい、まだ半分ものんでいないブラック・コーヒーを置いて、ドトールから立ち去ってしまった。
 「ねえはやくぅ。はやくいれてよぉ」と祐子は怒鳴った。
 「死ね!」
 Oh……Yes……
OoooooooNaKaaaaaaaaaaaNi
 そんな星野源だ。



 〈My Hoshino cream pie〉
「カタストロフときたもんだ。残念だが、生活は続いてくんだ。暮らしがあるだけでな。君は、そういった日常の連鎖に耐えることができなくなってんじゃないのかな? ちょうど、中学二年生くらいになると陥るそれみたいにさ……」

星野源とかいう朝鮮人が、またもや我が国、日本を荒らしにやってきたようである。
「カタストロフだよ」
「そうやって、君は、私のことをおちょくる。いいかい、本当のことなんだ。どうして信じてくれないんだ。君だって、人との関わりを通して、この世界を生きているのだろう? そうしたら、ある程度は人を信じなければならないのではないだろうか? 違うか? 例えば……二個下の女の後輩が、彼氏に浮気されて、傷心気味であると……彼女自身から告白されたとする。間違いなく君は、信用するだろう? 事実として——事実というのは起こった出来事という意味で——信用するだろう? しかし、考えてもみてくれ。浮気だなんて、一番、信用しにくいことなんだからな。なんたって、たくさんの人もが関わってくるんだ。事実が、全く事実ではなかったなんてことは、ざらにあるんだ。反面、私は、直接、リアルに、ダイレクトに! 星野源のうなり声を聞いているんだ。理解してもらえるか?」
私はもう、万策尽きてしまったようだ。
 パワーを手に入れた智幸は、密かに恋情を寄せている、たぶんピンク色の乳輪をその小ぶりな乳房の頂点に咲かせているであろう、祐子という女性に会うつもりで、あるスーパーへ向かった。
 と叫ぶ間も無く祐子は弾け飛ぶ。ものすごい勢いで射精したからだ。ガン・ペニスと呼ばれていた。
ああ、今日も星野源がやってくるのか。私は網戸のみの窓を横目で見やり、ため息をつく。
 だがどうあがいても陰毛は陰毛だ。パスタにしても陰毛だ。アンチョビと陰毛は相性が悪かった……。
 「源……」
 さらに獰猛な星野源は奇跡的に残っていた祐子の膣へこっそりと陰茎を忍び込ませる。あったかい……。


 智幸の頭の中に獰猛な星野源が巣食っていることは紛れも無い事実だった。

随分と奇妙な音に思えるだろうが、アメリカン・コミックスなどに慣れていれば、そこまで変哲なものではないと理解できるはずだ。
 今日は晴れていた。智幸はPornhubで知り合いの女を探していた。どこにもいない……。智幸は悲しくなった。なんでいねえんだ、ちくしょう……。智幸は情けない気持ちになり滝のように涙を流す。
 智幸はその度に「お前、歌詞の才能なくね? 生活とか越えてとかどんだけ使うんだよ」とため息を漏らす。智幸にとって獰猛な星野源の体毛発射行為は日常茶飯事である。今日も明日も南米で喘ぎ死に絶えていく子供たちがいるように……。
今日の星野源のうなり声は、いささか身体に堪える。全く、許しちゃおけない。この星野源をどうにかしないと、大変なことになることは間違いないのだ。と、前、彼に話したことがある。
 毛髪のみならず胸、下腹、大腿という大地にいみじくも跋扈する、ありとあらゆる体毛が一つの流れであり、それは生き物のように陰毛へと雪崩れ込んでいく。
この文を書いていたいまも、やはり寂しい思いに駆られている。彼は私の唯一の知り合いであったと共に、私の唯一の喋り相手だったのだ。
 
星野源が日本に上陸する際には警報なんてものは必要がない。正直言って、たくさんの人が死ぬ。死んでしまうのだが、警報は必要なく、政府が何かしらの対策を練ることもなく、ニュースで報じられることも、インターネットで片手間の肥やしにされることもない。
〈2018年8月2日 星野源を見ると嫌いな人間を思い出す、という怒りからこの小説を書きました。この頃は中原昌也をまだ読んでいなくて、高橋源一郎という小説家に影響を受けて書きました。〉
たくさん考えてみたが、彼抜きで星野源の悪事を世に伝えることには、無理がある。

 だが惣菜コーナーにある祐子の口から声は出なかった。
 苺に精液が付着する。練乳みたいでとっても美味しそうだ。


「ほう」彼は目をこすりながら「大変なことって?」


「大変なことになるんだよ」
 そして、射精……。
「あの朝鮮人め……」
 なんだこのアマ!

 抜け殻になった智幸の舵をとるのが獰猛な星野源——ここではさらに獰猛な星野源——なのだ。
と言う音にシフトする。

 助けを求めて獰猛な星野源に話しかけてみる。
 『彼のペニス(ガン)さばきは一流だね』
 「おはよう 智幸」
 そう、獰猛な星野源と言葉を交わすと妙な力が湧き出てくる……。それはぐんぐん伸びていくパワー。パワーを試すためにX hamsterに獰猛な星野源の射精動画をアップする。
そして、日本全体に鳴り響くわけだから、それなりの音量である。特に日本海側の人たちはかわいそうである。一日中、星野源の鳴き声を聞いて過ごさなければならないのだから。
「そうなんでしょうね、自分にはわかりかねるが」
「考えてもみなさいよ。私はね、中学の、ちょうど部活動に熱をいれはじめたころからずっと、星野源のうなり声が聞こえてきて仕方がないんですよ。なあ君、私の研究によると、星野源のうなり声が聞こえてくるのは個人差があるようだ。下の毛が生えはじめる前か……その後か……大雑把にわけるとこれだが、あんがい、下の毛が境目で五〇パーセントに分けられるんだな。面白いことに。そういえば、私が星野源のうなり声が聞こえてきた頃には、まだ、下の毛は生えていなかったな……」
 「陰毛パスタ!」と叫んだ。完成!

 獰猛な星野源から手に入れたパワーは本物だった。智幸は確信した。道行く女の砂漠のように乾いた膣にこっそりと陰茎を忍び込ませても女は気付かず、しかし女はこっそりと絶頂に達している……。

「そういうお前は精神科にでも行ったらどうだい」
なにがいけなかったのだろうか。
 『ペニス(ガン)の扱いは世界一さ』などなど、彼は一部地方で覇者として恐れられていた。だが最も恐れていたのは彼本人だった。彼ははじめての射精で天井に穴を開けて以来、膀胱から小便を解き放つ精神の余裕がなくなっていた。彼は頭と同じくらいの大きさの膀胱を引きずって生活している。



「私の統計によると、陰毛が生えてきて十年以内に星野源のうなり声が聞こえてくるのが、正常なんだ。つまりそうでなければ、異常……。君は、いまだツルツルであるか、もしくはそうでなくても、異常者であることは確実だな。泌尿器科に行くことをおすすめしたい」
 そして獰猛な星野源は射精……。

もう、無理みたいなんだ。
「冗談は、よしてくれないか。私はな、本気でいっているんだ。陰謀論でも、なんでもない。ましてや空想でもないんだからな」
「カタストロフ!」

悲しくて仕方がない。

いつしか《YuuuuuuMeeeeeeeeeNnnnnn・OoooooooNaKaaaaaaaaaaaNi・ÆNMaNa》、つまり星野源は、私の目の前で実体化し、鼻や口から入り込んでくる。ああ、私は星野源に殺されるんだ。唯一、星野源の悪事に気づけた人間だというから、星野源が抹殺しにきたんだ。情けない。情けないよお。私は沢山の人を救うはずだったのに、情けないよおお。
 祐子の肉片はレジに並ぶ中年女性の持つカゴや玉ねぎや歯周ポケットの奥の奥まで浸透した。
星野源がやってくる、ということは何を意味すると思うだろうか。ここまで詳しくは書いてこなかったが、星野源がやってくるというのは、端的にいって大量の人が死ぬ。だが、ゴジラがやってくるように、街をごちゃごちゃと荒らしてついでに人も殺してしまったぞ、というようなものではない。星野源はいつでも我々人間のみにフォーカスして、抹殺してくる。びっくりしたものだ。星野源のあの低いうなり声に耳をやられて死ぬものや、星野源のキツすぎる体臭にやられて死ぬものや、星野源の想像が容易な多様な女性遍歴にやられて死ぬものや、星野源の透明少女アコースティック・バージョンにやられて死ぬものや、様々な形で我々日本人を殺しにやってくる。恐ろしいことこの上ない。星野源が原因で死んだ人間は、第二次世界大戦の死者を軽く上回る。ただじゃ置けないのだ。

ÆNMaNa
 
【君の中に入る星野源、それはとてもこっそりと】
いつしかこの世界の人間は、星野源によって抹殺される。そんな、必然的なことが、どうして誰にもわかってもらえないのだろうか。
全く、忌々しい。忌々しいことこの上ない。
諸説はあるが、日本がバナナのような形に湾曲しているのは、定期的に星野源が朝鮮方面からやってきて、食い散らかしていったからである、と言われている。こちらの話は、誠に信じがたいことではあるが、信じがたいことであるために、真実であるこのことを世の中にしっかりと教えなければならないと、私はかねがね思っていて、さる出版社に勤めている知り合いに何枚か寄稿したことがある。彼、今は何をしているのだろうか。というのも、彼とは長らく何も話していないからである。彼は私の唯一の知り合いだったといっても過言ではない。そのため、私は最近とても寂しい。
 祐子を探す智幸は抜け殻になった。なぜなら智幸は祐子を探すために陰茎に力を込め、息つく間もなく射精を繰り返し、精液の赴くままに移動しているからだ。
それから彼に会ったことはない。
「へえ、知らないが、僕にはまだ、星野源の声は届いていないようだけどね」
 「俺って、才能ないのかな」
涙と、星野源に塗れた私は、星野源の恋のディスクの穴にペニスを挿入して、射精した。
と言う音が響いてくる。その次には
YuuuuuuMeeeeeeeeeNnnnnn
 「君の声を聞かせて」
そしてそれはこんな音である、
 スーパーには大量の生活が売っていて、獰猛な星野源はさらに獰猛な星野源になった。
《YuuuuuuMeeeeeeeeeNnnnnn・OoooooooNaKaaaaaaaaaaaNi・ÆNMaNa》の鳴き声が、網戸からぬるぬると這い出てくる。

その射精は、星野源星野源にまつわる人間を抹殺したかった、彼の最期の望みだったようだ。